【2009.3.4 旧ブログから筆者転載】
旅先でその土地ならではの食材や料理に出会うのも、旅の醍醐味のひとつ。今回も、「どうしてこんなおいしいものを今まで知らずにいたのか自分は?」とつい自問したくなるような、たくさんのおいしい出会いがありました。
たとえばスパイシーに味付けしたひよこ豆のぺーストをサクサクの衣で揚げた一口サイズのまんまるコロッケ「ファラフェル」 farafel とか、帰りに寄ったイスタンブールで食べた「焼きサバのサンドイッチ」(パンにはさむのは軽く塩をふった焼きサバと生玉ねぎのスライスだけ、という至って シンプルな仕立て。水さらししていない玉ねぎが刺激的なアクセントに!)とか...などなど、その全部を話し始めるときりがないので、今回はただおいしいだけ でなく香りのよさの面でも特に印象に残った「ザアタル」زعتر za'atar を紹介しておきます。

Morning Plates at the Grand Court Hotel, Jerusalem
上の写真で、白いクリームチーズに緑のパウダー状の薬味がかかってみえるものが、ザアタルをトッピングしたラブネ لبنة (ヨーグルトチーズ)です。チーズ自体に強い風味はなく、塩味の強い魚のマリネや香りのよいオリーブの実との相性は抜群!でした。
ザアタルは、アルメニアやトルコからパレスチナ周辺をへて北アフリカのモロッコに至るまでの広い地域で用いられているグリーンハーブミックスで、特 にパレスチナ周辺ではこれをラブネなどのチーズ類にかけたものが朝食の定番メニューになっているほか、ピザのような総菜パンにふりかけられたりと、いわば 日本の「七味唐辛子」(でもザアタルは辛くないですよ)のようにポピュラーな存在です。
たとえば今回滞在したホテルでは、毎朝このザアタルと白ゴマをブレンドしてトッピングしたヨーグルトチーズが、さまざまなチーズやパン、たっぷりの 生野菜や魚のマリネといっしょにビュッフェ形式で供されていました。(ホテルの朝食にお決まりのソーセージやハムが出てこなかったのは、ユダヤ教徒の間に 「牛や羊・鶏といった食肉およびその加工食品を、乳製品と一緒にたべない」という食習慣があるためとのことです)
ザアタルそのもののレシピは za'atar で検索するとぞろぞろ出てきますので、そちらを参照していただくとして、ここではあの深呼吸したくなるようなフレッシュな風味を彷彿とさせるエッセンシャルオイル・ブレンドをメモしておきます。ポイントは、
- タイムやスイートマジョラム、オレガノなど、いずれもミント系の風味と相性の良い、きりっとしたハーブの香りで統一感を出していること、
- 料理に用いるときは、レモン果汁とオリーブオイルが必ずと言っていいほど添えられるので、精油のブレンドにもレモンを用い、全体の雰囲気をまとめていること、
の2点です。
Recipe / Recettes
- タイム・リナロール精油 Thyme linalool E.O.
- スイートマジョラム精油 Sweet Marjoram E.O.
- オレガノ精油またはヒソップ精油 Oregano E.O. or Hyssop E.O.
- ペパーミント精油またはスペアミント精油 Peppermint E.O. or Spearmint E.O.
- レモン精油 Lemon E.O.
追記:
上のブレンドを試してみて、はじめてわかったことがひとつありました。エルサレム旧市街のアラブ人街では、あちこちの道端にアラブ系のおばあちゃんが座り 込んで山盛りのハーブを売っていたのですが、これ、まさにあのおばあちゃんたちの前に積んであったハーブの山の匂いです。幅2m程度の狭い路地のような商 店街には、衣料品店や電器店に交じって肉屋も魚屋もあるのに、不思議と生臭い匂いがしなかったのは、このハーブの香りのおかげだったんじゃないかな。
唯一の例外は、延々と畜肉の専門店(内臓も扱っているところ)がつづく通りで、あそこだけは鼻が曲がるかと思うほどの強烈な匂いでした。いやまったく、あれほどの臭気はここ数年、嗅いだことなかったです。
Meat shop in the Muslim Quarter, Jerusalem
しかし言われてみれば、日本でだって生きた家畜の肉がスーパーに並び我々の食べ物になるまでの過程には、本当はあのように解体され生々しい臭気を発 する段階というのはおそらく存在するはずで(輸入肉の場合、その過程も海外で済ませてキレイに冷凍されて届いているのかな)、むしろその段階の匂いが、こ の国に暮らす我々からはあまりに遠ざけられているから、みんな、ないし少なくとも僕は、てっきりそれを忘れてしまっていた、ってだけのことなのかもなあ。
あと、アラブ人街の肉屋の前には、必ずと言っていいほど、シッポの部分だけ皮と毛を残して、あとはむき身(?)になった畜肉がきれいに並べてつりさ げてありました。ムスリム社会では、食用畜肉がクルアーンの指示に従って「食べてよい動物」の肉かどうか、またそれが正しく処理(屠殺および血抜き)され たものであるかどうかが重要なので、ああいう陳列販売は、それらのことをわかりやすく示すためにも、必要なことなのかもしれません。

[gandha]