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2009年3月15日 02:27 AM

シアバターを練りながら... 'I Am a Bird Now' & 'The Crying Light' by Antony and The Johnsons

明日(いや、もう今日か)は朝が早いので早く寝なきゃと思いながら、なんとなく寝付かれず。じゃこの時間を利用して追加でクリームベースの材料を融かし合わせておけば明日から新しく練り込み段階に入れるし、そういえば買ったままちゃんと聴いていなかったCDもあったから、そんなのぼんやり流してればいつの間にか寝てるでしょ、なんて思って何気なく再生スイッチを入れたところ、入っていた CD は Antony and The Johnsons の I Am a Bird Now 。... 無理。これで眠るのは無理。

ありがちなことに、私も彼、というか彼女、というか、ともかくこの人の The Crying Light のジャケットを見て呼吸を奪われ、衝動買いした口です。ふつう、そういう衝動買いをすると、んー、やっぱりさー、期待してたほどじゃなかったかもだよねー、だから衝動買いはやめようって前にも思ったじゃーん、みたいになりがちな私なのですが、とにかくこの人のは違う。しかもそれが、予想していた方向に、ほら!ね!これこれ!的なヒットではなく、...え?こっちじゃなくて、そっち方向からですか?みたいな、思いもかけない角度でもって、予期せぬタイミングに無限の暗き淵と永遠のほのかな光明を垣間見せてくれたりするもんだから、もう実に気が抜けないわけです。


最近あんまり音楽を聞いて驚くということのなかった私が、どうしてこの人の作品にそれほどまでの意外性を強く感じるのかなあ。もしかすると、

今時の、というか、フツウの(なんて形容詞はあまり適切でないとは思いながら、とりあえず)音楽が支配されがちな、あるいは当たり前のように自ら身 を委ねてしまう「音の数と楽曲が紡ぎだす世界の密度および次元」の法則性を、A&tJ はざっくりと、あたりまえのように無視することに成功している、か。または、同じ法則の延長線上にありながらも、どっかの定数か変数の次元を勝手に書き換 えちゃいました、みたいな。

だってE=mc2なんてもう今さらって感じ、どうせならE=m-7c999く らいのほうが dramatic & fabulous でステキでしょ? なんてさらりと微笑んで見せながら、でも実はそれは体の外も中もひりひりする傷がいまだ癒えないような試行錯誤の末にたどりついた危うい場所、その人たち でなければ、あるいはその音の組み合わせでなければこの世界に存在することさえなかった、薄い薄い雲母板でできた高層トランプタワーのてっぺんみたいな、 それはそれは静かなる奇跡の、涼しい顔をして立ち止まっている場所だったりする。

なんて、もしそういう言い方が許されるなら、クレーやマ ティスのドローイングなんかもそうかな。白い画面に黒い線がほんの数本だけ、コドモにも真似できそうに見えて、でも尋常ならざる自由奔放さとそれを的確に 表現しうるだけの、常人には手の届かない場所にどっしりと根付いた創造力があればこそ、うっかりすると「え?今の、何?」みたく二度見、または rewind & replay をせざるを得ないような、深い翳りと複雑に屈曲した光を内包するに至った、のかもなー。

A&tJのこの2枚のアルバムの場合、基本はピアノにストリングス(といっても弦軍団ではなくてソロまたはトリオかカルテット)にドラム に、楽曲によっては管楽器が数本加わり、あとはとボーカルだけという、実にシンプルな構成です。でも、ボーカル重ね録りコーラス部分ひとつとっても、普通 の「事前にコーラス譜があって、それを順に歌って重ねて」みたいなのももちろんあるわけですが、ときどき「テイクごとのアドリブをそのまま重ねちゃいまし た」的なところが何箇所かあって、時に伴奏やコーラス同士のあいだで相容れない和声が鳴ったり、早く止む音符と遅くまで続く音符と次の音符の前打音がわら わらと重なったり、いろんなことが起きているわけですよ。

そういう現象が繰り返し起きてしまうと多くの場合、音楽はその構造を維持できなくなって自己崩壊してしまうか、あるいは聴き手がどの音の流れを中心 にその音楽の世界を解釈していいのかわからなくなって不安になったり、あー、気持ち悪い、やめやめ、みたいな不快感スイッチ・オン状態につながってしまう 場合がほとんどだろうに(正直言うと、聴き始めて数日の間は、私もそうでした)、A&tJの場合、そういう「どっちが正でどっちが負かわからな い」ような無重力的ポリフォノラルな世界がぽかっと広がった瞬間にあっても、その空間の中では不思議とどれもが主旋律であるように聞こえ、あれ?むしろ 「主旋律と副旋律」や「メロディーと伴奏」って二分法に縛られていた私のほうが悪かった?ゴメンナサイは私のほう?みたいな気さえしてきてしまう。

... なんて話をしているうちに、ようやくシアバター95%+ホホバオイル5%の溶液が凝固してきてくれました。蜜蝋なら溶液が40度台まで下がればふつうにク リーム状になってくれるのに、シアバターは一度溶かすと95%なんて高い濃度でもなかなか再凝固しないんですよねー。不思議。そしてそこにローズマリーエ キスとローズマリー精油とシダーウッド精油を入れてさらに混ぜたりなんかするわけです。うーん。実にいい香り。

あ、CDも鳴りやみました。そろそろ眠くなってきたかな?では、オヤスミナサーイ。

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