ブラッドオレンジの濃厚な香りをフューチャーしたロクシタンの名作「フー・ドランジュ」シリーズ。残念ながらロクシタンのUS版サイト・フランス版サイトの双方の商品リストから姿を消してしまったので、現時点では日本以外の実店舗に残っているものがデッドストックということになるようです。
- FR: Eau de Toilette Intense "Feu d'Orange", L'Occitane
- EN: Feu d'Orange Eau de Toilette Intense, L'Occitane
- JP: ロクシタン オードトワレ・アンタンス「フー・ドランジュ」
【以下、旧ブログ2008年9月27日の記事より筆者転載、一部改訂】
ロクシタンでオレンジを使ったラインといえば Ruban d'Orange (日本では「オレンジ・リボン」)が定番でしたが、正直いまひとつインパクトがなく、購入には至りませんでした。しかし、同じオレンジでも新しい Feu d'Orange のラインはもう全然ちがうのです。
まず印象的なのは、「オレンジの炎」という名前が示すとおり、シチリアのブラッド・オレンジをモチーフにした、オレンジというよりはバーミリオンに近い濃色のボトルカラーと、 Feu のロゴを縦に貫く赤いライン。そして名前の最後につけられた "Intense" の一語の意味が、単なる「濃厚なオレンジ」にとどまるものでないことは、ニオイ族の皆さんにはムエットにひと吹きした瞬間におわかりいただけるでしょう。精油でいえばスイートオレンジ Citrus sinensis ではなくタンジェリン Citrus reticulata、そして決め手は、
スパークするブラッド・オレンジの香りの向こうに、ドライであたたかなアンバー・ノートがほんのすこし透けて見えること。数十年、時には何世紀にもわたる長い時間を内包するアンバーの静謐で甘やかなノートと、一瞬にしてまばゆく輝きはかなく消えるブラッド・オレンジのフレッシュなノートとは一見対極にあるように見えながら、いずれも濃い暖色、濃縮されたエネルギーを連想させるという点で、見事に調和するんだなあ、すごいなあ、と感服させられた一品です。
こういう作品に出会うと、なんかもうオードトワレを pour Femme とか pour Homme とかいちいち分けるのが馬鹿らしく思えてしまいます。だってこういう香りなら、誰がどう使ったっていいじゃん、もう。男用とか女用とか、そんなのホントどうでもいい。つか、日本のおじさま方には、仕事の日は致し方ないとしても、せめてヴァケーションの間くらいは、オークモス・ベースやベチバー・ベースの香水ばっかりじゃなくて、こういうのもぜひ試していただきたい。最近は男のおしゃれメガネもずいぶん浸透してきましたが、次はフレグランスも、もっと自由に楽しめるようになると、いいですね。
写真に撮って残すことのできない、そしてどんな言葉にも置き換えることのできない、あなたのすぐ傍らにいる誰かとだけ密やかにシェアされる、あなたの肌+αの香り。たしかに、「ちょいワル」だとか何とかをいまだに唱え続けるマニュアル世代向けの写真ファッション雑誌に載ってるお仕着せのブランド・スーツを猿真似で買って着て悦に入るよりも、自分の個性や目指す方向性にぴったりくるフレグランスを見つけて乗りこなすには、はるかに多くの経験と技量が必要でしょう。だけど、そういう「不可欠じゃないけどあったほうが(本人も周りも)楽しくなる緊張感」が、男女雇用機会均等法成立以前に就職して、良かれ悪しかれ今の現実社会の指導的立場に立っているおじさま方には、どうも欠落しがち...なように、私には思えてしまうのです。

[gandha]