2010年2月アーカイブ

2010年2月18日 03:05 AM

ハチミツの匂いのお香。いわゆるハチミツのとろりとした感触の中にも、斜め上向きでやや鋭い半透明なツノ(おそらく花粉臭)がちゃんとついている、上等で濃厚な蜜の香り。

花の蜜、蜜蜂の巣の蜜、それは過去と未来の命と命をつなぐ祈り、言葉にも音にもならぬ記憶と切望を飽和限界を超えて託されたその果てにあって、とうとうまばゆい山吹色の粉や黄金色の流動体という神聖かつ奇妙な形質を伴うに至った、それらは実に稀なる具象。されば天のいと高きところに。あるいは深き淵のかたわらに。刹那と永遠、絶望と再生、そのすべてを溶かして。蜜の香り、今ぞひとたび高らかに。満ちましを。満ちましを。

official description: Honey

2010年2月18日 01:37 AM

カスタードの香りのお香。というと、ビレッジバンガードやドンキホーテあたりでも売ってそうですが、いやいやそうじゃなくて、SYOEIDO の LISN による、カスタードの香りのお香なんです。点火前から見えないプディングがあふれてきそうな香りのスティックに、点火するとしばし焦げたカラメルの香り。やがて濃厚な卵黄とバニラの香りが加わって、たしかにカスタードクリームの香りに。火を消してからも、カラメルとバニラの香りがしばらく残ります。

でも、これ、誰がどんなときに使うんだろう...と、私は余計な事を考えだす。コドモのバースディパーティーにお招きされたお友達を迎える玄関?そんなイノセントでハッピーなシチュエーションには、もちろんさぞかしよく似合うだろうけれども、どうしたことか私の頭の中の妙な所には、 demolition という一語が浮かんだまま、くっついてはがれない。あの楽しかったパーティーから幾千幾万の昼と夜を経て、今ふたたび常ならぬ甘やかで心地よい幻想のいざないへと、今しも現実の戸板を踏みぬかんとする誰かの、青暗く湿った冷たい部屋の空気。おそらくそれはこの香りの補色でできた風景、次元の壁をぬるりと超えてひろがる色相環の、誰の目にも見えない中心の真向かい、この香りの幼く透明な指が、黙って指し示す対極の彼岸。

official description: Custard

2010年2月18日 01:15 AM

チュベローズの香りを配したという鮮やかな紅色のスティック・インセンス。点火前のスティックからは濃い目のパウダリーな印象を受けましたが、点火後の印象はパウダーを通り越してトロリとしたヘヴィーな蜜のテクスチャへと変貌。香りはチュベローズ...も含んでいるけれども、ココナツのような乾いた甘さや線の細い香り・太い香りがより合わされて漂ってくる気配は、どちらかというとシングルフローラルよりはトロピック百花蜜といった風情。でも冠する名前はサンドリヨン、すなわちシンデレラ。透明なガラスの靴と、まったり重~い紅色の蜜。12時を越えたらいったい、何がどんなふうにどうなっちゃうのでしょう。なんだかサスペンスな予感。ちなみにインセンス・リストについていた "FEELING" と "TIME" のマトリックスでは、CENDRILLON は CALM (#850138), MOVEMENT (#850209) とともに "LUXURY" / "NIGHT" のマス目でリコメンドされていました。

official description: Tuberose

2010年2月17日 05:32 PM

ここ数年、春先になるときまって、サクラの香りの芳香剤だとか入浴剤だとか、その手のものがスーパーやホームセンターにずらっとならぶようになりました。でも春の喜びを感じさせてくれる香り高い花なら他にも水仙、沈丁花、梅、フリージアと枚挙にいとまがないし、蓬餅や柏餅のように草や葉の香りで春を感じるという伝統だって日本にはあるわけで(いわゆる「サクラの香り」の正体だって、実際のところは花というより桜葉に多く含まれるクマリンの香りですよね)、「ヨモギの香り」「柏の香り」を銘打った香り商品がもっとふえてくれるといいのに、と毎年思う私であります。

だもんで、リスンの商品一覧に「ヨモギ」を見つけた私がそれを買って試してみるのは至極当然の成り行き。点火前のスティックを鼻に近づけると、パウダリーな香りの中にかすかに蓬葉の青い匂いがする...ような、しないような。そしていざ点火、するとみずみずしく温かなヨモギの香り...もほのかにするのですが、全体的にはオーセンティックでどちらかというと甘めの、いわゆる「お線香の香り」が強いような印象を持ちました。お寺の境内でヨモギを摘む春日和の気配、これはこれでなかなかに素敵なもの。

official description: GREEN / Mugwort

2010年2月17日 03:43 AM

乳香(オリバナム)はご存じの通り洋の東西を問わず香原料として広く用いられてきた樹脂で、リスンのラインナップの中にも CLAIR (#850961, Olibanum)、AVENUE (#850231, Olibanum and Resin) など、いろんなところに顔を出しています。その中でこの OPAQUE SILVER は、白檀(サンダルウッド)と乳香をブレンドしたという、上品な薄紫色をした一品。点火直後は、うわっ!しまった!とあわてるほど強くパウダリーな匂いがしてびっくりしましたが、ほどなく穏やかな香りに戻り一安心。オフィシャルなディスクリプションでは「白檀」のほうが「乳香」より前に書かれていて、それはきっと乳香よりも白檀がベースに調香されているということなのだろうな、だとしたらかなりオリエンタルな印象なんじゃないかな、と予想していたところ、控えめな甘みと酸味のバランスが絶妙で、それはある種東洋的でもあり同時に西洋的でもあり、...いや、洋の東西などという些細なことにとらわれる必要など、そもそもないではないか...なんて心境についいざなわれるような、それは実に深く心を鎮め静かに励ましてくれる香りでした。日常使いをするには多少パワーが強すぎるけれども、いざという時にあると嬉しい1本、かもしれません。

追記:2010年2月時点で配布されていたスティック・インセンス一覧表でのディスクリプションは「白檀と乳香」でしたが、同時配布の月替わりのインセンス・セレクション・シリーズ「Dream and Color」のリーフレットでは、この OPAQUE SILVER はKYOKA (#850127), ELIZA ET ERIC (#850150) とともに12月の3本のうちの1本として掲載され、そこでのディスクリプションは(「白檀と乳香」ではなく)「パウダリーシック」となっていました。というわけで、二者併記↓

official description: CLASSICAL / Sandalwood and Olibanum, powderly chic

2010年2月17日 03:26 AM

精油メーカーが異なれば同じ原料でも精油の香りにある程度の違いが出てくるのは当然というものの、「ジュニパーベリー」ほどその差がはっきりとしている精油はほかにあまりない(あとはパインくらいかなあ)と私は常々思うのですが、皆様いかがお考えでしょうか。ではリスンさんはどんな解釈を?ということで買ってみたのがこの1本。

ネズの木の葉を思わせるダークグリーンのスティックは、点火前は控えめなウッディ調の香り。点火直後は、あれっ?何かに間違って火をつけちゃった?と思うほど、一瞬強くワキシーな(蝋くさい)匂いが広がって、そのあとも紙が燃えているような 、どちらかというとインセンスっぽくない独特の燃焼臭が続きました。ところがしばらくすると、これは鼻がなれたのかそれとももともとそのように工夫して作られているのか、ジュニパーベリー=セイヨウネズの実をすりつぶしたような独特の香りと、針葉樹独特のヤニっぽい香りが、ちゃんと漂ってくるんですねえ。良くも悪くもまるで日本のお香じゃないみたい。何も知らされずに「はいこれ東欧のお土産、田舎の教会の近くで売ってたんだ」と手渡されたら、ふーん、なるほどねえ、たしかにねえ、いかにもそんな感じだものねえ、なんて納得してしまいそうな。逆に言うと、日本に暮らす日常を一瞬にして別世界に塗り替えてしまえるような、静かだけれどもパワフルな香りの一品でした。これもリピート決定かな。

official description: SPICE / Juniper berry

2010年2月17日 03:10 AM

良い意味で予想を裏切ってくれた1本。ディスクリプションには英語で「Green woody, Japanese wind」、日本語では「イグサ」と書いてあって、ああ、日本の風をイグサの匂いで表現してみたということなのかなあ、でも青畳の匂いってインセンスで再現できるのかなあ、などといろいろ予想してみていたのですが、いざ点火してみると落ち着きのあるウッディノートをベースに気持ちが軽くなるようなハーバルトーンが重なり、その全体を貫きまとめるようにデリケートなアクアティックないしオゾニック・ノートと乳香のような抑制のきいたリモネン系のノートがほそーく漂うという、なかなかに複雑で秀逸な構造をもった香りを感じることができました。これで10本315円とは。すばらしいです。

2010年2月17日 02:56 AM

乾草 hay の香りのインセンスはありますか?とお店の方に尋ねたとき、これが近いかもしれませんと薦めていただいたのが、麦わら色のこのインセンス・スティック。HARVESTという名前からするとイメージは秋の喜びといったところでしょうか、ややパウダリーで甘く華やかな印象を受けましたが、陽射しをたっぷり受けて乾いた麦藁が放つ、胸一杯に吸い込むとなんだかこっちの気持ちまで軽く明るくすこしくすぐったくなるような、あの香りもちらちらと、顔を見せてくれました。

official description: Wheat field

2010年2月17日 02:18 AM

苔 moss の香りをフィーチャーしたリスンのインセンスにはほかにも REFLECT (#850269) や VISIBLE 023 (#851023) などがありますが、その中で最もライトなタッチに仕上がっているであろうものがこの DAZZLE。淡いモスグリーンのインセンス・スティックは、点火前はかすかなハーバル調の香り。点火直後はメロンのようなオゾニックノートがぱっと広がってちょっとびっくりしましたが、そのあとはオークモスやヴェチヴァーを思わせる定番mossy系の香りが軽やかに漂い、レジノイドといっても松柏や乳香などの鋭いピネン系ではなくバルサム・アンバー系のまろく甘く乾いた香りとあいまって、陽のあたる温かで明るい水辺の草原に、のびのびごろんと寝転がっているような印象を受けました。春先は花粉症で外に出たいけど出られなくて...なんて方は、閉めた窓越しの五月空をながめながら部屋で1本くゆらす、なんてのも、いいかも。どうでしょう?

official description: Moss and Resinoid

2010年2月17日 01:59 AM

ディル、山椒、パセリ。こんな絶妙な組み合わせを、よく思いつくものだなあと感服して1本購入しました。ビビッドグリーンがあざやかな点火前のインセンス・スティックはかすかにハーバルで、なぜかほんのすこしミツロウのようなワキシーな香りを感じました。点火後の香りもおだやかで、青っぽさと渋さと甘さの三角形がしずかに均衡している印象。強いて言うならディル特有の甘い香りがやや前に出てきていて、これならダイニングの近くで焚いても大丈夫かも。エッセンシャルオイルだったら消臭効果もありそうなブレンドですが、さてお香になるとどうでしょう?一度お試しになってみてください。

official description: SPICE / Dill, Sansho and Parsley

2010年2月17日 01:49 AM

点火前はキャラウェイのような甘鹹く軽い香りの、とりたてて特徴があるということもないライトブラウンのインセンス・スティック。ところが!点火すると見事、あの懐かしい「焚火」の匂いがするんですねえ。あるいは素焼きの皿で茎番茶を炒るときの香り、と言ってもいいかもしれません。木材の木質部分ではなく乾いた小枝や枯れた葉を加熱する時の、あの香りです。しばらくするとその奥のほうから、ヘーゼルナッツのようなコクのある香りやバニラのような甘く浮ついた香り、かと思うと樹脂を含んだ樹皮が焼けるときの深い香りが、かわりばんこにちらちらと顔をだしてはすっと通り過ぎていきます。でもディスクリプションに「bonfire」ってあるのがちょっと気になる...それって、垣根の垣根の曲がり角、の焚火ではなく、五山送り火とかのイメージってことですかねえ。ボンファイア。それはそれでなんとなく、プリミティブなパワーを感じる響きです。ボンファイアー!

official description: CLASSICAL / a bonfire with nuts

2010年2月17日 01:17 AM

ウーロン茶の香りがするという、ウーロン茶色のインセンス・スティック。気になりますよね。点火前はバーチタールのような苦みをほのかに感じさせる乾いた香り。点火後は、スタンダードなウッディノートの中に、タールや木酢液を薄めたようなほろ苦さ・渋さと、わずかに水を連想させるオゾニックなトーンを含んだ、ドライながらも繊細・華奢な印象をのこす香りでした。

official description: GREEN / Oolong tea

2010年2月17日 01:11 AM

ずばり龍脳、のち鹹めの漢薬。おそらく2010年2月時点で150種を超えるlisnのラインナップの中で、これが一番ドライなのではないかと。なんだかさっきからドライドライ言ってて申し訳ないですが、日々いたるところで余計な人工香料の放射能に曝されつづける五体とその感覚を一旦リセットするためには、不要な匂いとその残影をそぎ落としてくれるようなチカラがどうしても必要で、私の場合は経験的に「強くドライで無彩色な香り」-たとえば石の匂いや雪の匂いのようなミネラル臭、または炭の匂いや龍脳(結晶体)の匂い(こうしてみると偶然にも視覚的彩度もゼロのものが多いですね)などの香り-が、その「そぎ落とし」の工程に効果をもつらしく、必然的に使用頻度が高まるため、どこかにもっと心強い味方はいないだろうかとついつい探してしまうのです。

このインセンスのディスクリプションには「Sumi-ink/スミ」と書かれていて、それが「炭」でなく「墨」であることが念押しされていますが、ご存じの通り書道などに用いられる上等の墨には龍脳が配合されていて、それが墨をする際の独特の香気を生み出しています。点火前のスティックの香りはまさに龍脳。点火後も、余計な甘みはほとんど感じられません。私の中での新定番、決定です。

official description: SPICE / Sumi-ink

2010年2月17日 12:47 AM

「Rust / サビ」と一言書かれたディスクリプションを見て、咄嗟に思い出したのは Demeter の Dust。もしかするとあれ並みの衝撃が...と期待をして、試してみた1本。文字通り赤さび色のインセンス・スティックに鼻を近づけると、漂ってくるのは酸化鉄の苦く乾いた酸味のある香りというよりも、やや鹹い沈香に丁子をまとわせたような、どちらかというと甘めの香り。そのせいか、点火直後はドライなトーンが際立って感じられました。燃え尽きる前には再びオールスパイスや丁子のような甘みのある気配が前に出てきた気がしたものの、点火中の印象は VIOLA DA GAMBA より明らかにドライ。むしろ途中の甘い香りは鹹みを強めるための補色的役割ととらえると、絡みの強い香木・漢薬の香りが好きな方、とりあえず1本ドライなお香を焚いておきたい場面などに好適かも。個人的には、もうちょっと苦み・えぐみがあってもいいかなあ...なんて思いましたが、それはDemeterなんかと比べるからで、日本でインセンスとして焚くには、これくらい控えでたぶんちょうどよいのでしょう。

2010年2月16日 10:10 PM

Borneo Camphor(龍脳)をフィーチャーした調香というのが気になって、試してみたく購入した1本。点火前はライトベージュのカラーが似つかわしい、軽みのあるウッディノート。点火後は落ち着きのある木質の香りをベースに、乳香やライムを思わせる、透明感のある黄色ないし緑色みを帯びたすべらかで華やぎのあるジューシーな香りが、比較的強く感じられました。残り香も若い白檀を焚いた後のような、深呼吸したくなるみずみずしさを含んでいました。

自分の中では、龍脳の香気というと(良い意味で)「生命感」というものを持たないか、またはそれを超越した無彩色の結晶体のイメージ、固体と気体という双極相反の状態を昇華という現象でしずかに結ぶ、ある種「不垢不浄」の香り、といった印象が強かったため、いつその匂いが漂ってくるかな?とずっと身構えているうちに今回のスティックは燃え尽きてしまったのだけれども、次はぜひ「取り出された龍脳の結晶体」より「龍脳の香気を含んだボルネオカンファーの樹木やその葉影にまどう明るい風光」を思い描きながら、愉しんでみることとしましょう。

official description: CLASSICAL / Borneo Camphor

2010年2月16日 06:48 PM

2月初旬の冷たい雨が降る午後、cocon烏丸1階にあるリスン京都店で購入した16本のインセンス・スティックのうちの一本。点火前のスティックは、ラプサンスーチョンそのままのスモーキーな香りに、カストリウムのレザーノートがうすく重なったような香り。点火後、燃焼中はパウダリーなトーンが前に出てくるものの、焚き終えてしばらくした部屋は、ほのかなアンバー調の甘みを含んだドライな余韻がただよって、なかなかに心地よい。スティックの色は濃いグレーだったが、残り香の印象は色彩で言うなら彩度の低い濃褐色、ダークチェリーオークあたりか。してみれば古楽器の名を冠したネーミングもなかなかに絶妙。紅茶のラプサンスーチョン同様、肌寒い雨の日や、静かな気分になりたい時に好適かと。

official description: ORIENTAL / Lapsang Souchon and Castoreum

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