いつか来た道。
たとえば、自分が産まれてまもなく暮らしていた場所から、ものごころつく前に遠く離れて今くらしている誰かが、「あの町での記憶なんてなにもないよ」と言ったとして。
でも、その「産まれ故郷」でその人が無事に産まれスヤスヤ眠ったりにっこり笑ったりするのをまわりの大人たちが涙の出るほどうれしい思いで見守っていた、その中で誰かに手をひかれて初めて自分の足で歩いた道があったとして。
その道はその人にとって、「いつか来た道」に入る、のかどうか。
あるいは、地図と記憶によれば間違いなく数十年前と同じ場所を歩いているはずなのに、都市開発で道がズレたり広がったり、また田んぼだったはずの場所に大きなビルや見知らぬ新興住宅地がならんでいたとしたら、それでもその道は「いつか来た道」に入る、のかどうか。

[gandha]